竹井10日『東京皇帝☆北条恋歌1』(角川スニーカー文庫 2009)

東京皇帝☆北条恋歌1 (角川スニーカー文庫)

東京皇帝☆北条恋歌1 (角川スニーカー文庫)

 タイトルに☆が入っていたりヒロインのフルネームが入っていたりする作品はそれだけでなんとなく自分には合わないなあと思っているのだけど、著者の名前に惹かれてついついもろにそんなタイトルの本作を手に取ってしまった。ってのっけからそんな後悔してる言い方ってどうなんだ。日頃からノベルゲーを好んでプレイ……平たく言えばエロゲオタとかギャルゲオタとかそんなろくでもない奴であるぼくには*1この著者の名前に見覚えがあって、つまりはこの人がライターを務めた某ゲームを昔プレイして結構気に入っていたというわけだ。正直シナリオ自体は泣きゲーの元祖と言われる某作品の二番煎じ感があったものの、テキストが非常に面白かった記憶がある。たまにはゆるい作品を読むのもいいかなと思ったし、この著者なら笑わせてくれるかも、そんな感じで手に取った。
 タイトルから推測できるように東京が独立国家という設定で、ヒロインが皇帝とか軍指令官とかで、宰相が主人公の婚約者で、彼女達が主人公の学校に転入してきてドタバタやって、なんか皇帝とか軍指令官の娘も主人公に好意を抱いたりして、あと妹も主人公にぞっこんで……話としては確かそんな感じ。
 キャラはテンプレ山盛りだけど結構可愛い。著者はラブコメをたくさん書いてる人なのでその辺りは上手いのだけど、それ以上のものがない上に他の要素はむしろ僕のテンションを下げた。ストーリーはあってないようなものとはいえ、一応の流れと展開はある。それがキャラの可愛さを引き出すのに一役買っていればいいのだけど、そうはなっていなかった。途中で唐突に魔法とかロボットとかそんな感じのトンデモ設定が出てきて*2雰囲気は一転してシリアスに、主人公には操縦者としてすごい適正がある!とかいう展開になって、裏でも何かが動いている……ということを匂わせつつ、結局最後まで何も起こらない。タイトルに「1」と入っているので続刊前提で発売していて、その設定は2巻以降に出てくるのかもしれないけれど、じゃあ1巻に入れる必要があったのだろうか?上下巻的な形式ならともかく、巻をまたいで微妙な伏線(?)を仕込まれても興醒めだなあ……。世界観説明であるのならもっと自然に触りだけ入れれば良かったんじゃないかと思う。
 正直テキストも少々あざといところが目について自分には合わなかった。パロネタが多すぎるところもマイナス。この人はもともとこういう作風だった気がするので、自分の嗜好が変わったか、昔プレイしたゲームの思い出が美化されすぎていたのかもしれない。以前『電波女と青春男』を読んだ時に「ゆるい日常を垂れ流す話は合わない」とか書いていつつ、かつこの作品がそういう日常系だと分かって手を出した自分も悪いのだけど。でもこの前ぱらぱらと読んだ『僕は友達が少ない』は意外と面白かったので、日常系が全然ダメというわけでもないんだよなあ。まあ、僕の好みではなかったということで。個性的な作風なので好き嫌いは極端に別れる気がする。ギャグが楽しめ、キャラの可愛さで他の全てを許せる人なら合うかもしれない。

*1:最近は時間的経済的な理由でほとんどやっていないけど

*2:そもそも東京が独立国家って時点でトンデモだし、そこは別に構わないのだが

魔法少女まどか☆マギカ7話

 もうなんか飛び飛びでなんだろう、3話以来書いてなかったけど、まどか☆マギカにハマりすぎてヤバイ。各話何度も見直してるしBD予約したし漫画もCDも発売日に買った。ヤバイ。ヤバイ。特にほむほむがほむほむすぎてヤバイ。いや、キャラ萌えでハマってるわけでもないんだけど、でもほむほむはほむほむ可愛い。
 いやー、上手く出来てて本当に面白いな。6話で明らかになったソウルジェムの件は契約シーンがまさに魂の抜ける感じだったからある程度想定はできていたけど、まどかがさやかをころころしちゃうとは流石に予想外。こうやって予想を裏切ってくれる作品ってたまらない。とりあえずキュウべえは殴るべき。
 7話は今までの回に比べて少々展開が駆け足だったかな?という印象。ただ見直すと杏子とさやかの件はそこまで不自然でもないかな、とも思った。杏子はもっと完璧に自己中なキャラかと思っていたけど、根は良い子で、自分と同じ道を辿るさやかを自分に重ね合わせてしまったので少し甘くなってしまったのではないかな?マミさんと同じで杏子も孤独で、他人を犠牲にして自分の為に戦うと決めることでそれに耐えていたのではないか、と。
 後半の戦闘〜さやかが壊れてしまう流れは影絵風の演出の良さもあって背筋がぞっとした。怖い、怖いよ。こういう恐怖感を煽る展開は本当に上手いなあ、虚淵氏は。仁美のライバル宣言からさやかがダークサイドに落ちる展開が少し早すぎた気もするけど、仁美の真意がわからないから来週どうなるのかに注目したい。
 しかしマミさんが死んでからここまで完全にさやか☆マギカ状態。6話で衝撃的な事実を突きつけられ、7話で壊れてしまい、この後も転げ落ちていくのだろうなあ……。まどかさん主人公なのに恐らく現在メインキャラで一番不人気なのではなかろうか。叶えたい願いもないし目の前で次々酷いことが起こってはああなるのも仕方が無い気もするけども……。他のキャラとくらべるとうじうじしてる印象があるけど、個人的にはむしろ同じ境遇だったさやかの考えが浅すぎるように思える。あっさり契約してしまって、マミさんの忠告も自分の中で上手く消化できていないんじゃないかなー。そのあたりからもうさやかは転がり始めていたんだろう。本当にまどか☆マギカは地獄だぜ!
 さやかは上條のために願い、杏子は父親のために願った。自分自身のために願いを使ったマミさんが、最も理想的な正義の味方になれていたのは皮肉だよなぁ。奇跡というものを安易に使っても全てが上手く回るわけではない、というのが残酷ながらすごく好みな展開だ。果たしてほむらは何を願ったのか、まどかは何を願うのか。あと5話しかないのが惜しいくらいに毎回毎回楽しすぎる。来週も楽しみ!

野崎まど『[映]アムリタ』(メディアワークス文庫 2009)

[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)

[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)

 映画を作っている芸大生たちはとても眩しい。いや芸大生に限ったことじゃないんだけど、芸大だと特に撮影とか脚本とか演出とかそれぞれ専門的に学んでいる人が集まって、それらが組み合わさって一つの作品が作られるという環境がある。僕は普通の四年制大学の学生だけど、近くに芸術系の大学があって、そこに通っていた友人の手伝いで何度かそういう場所に足を踏み入れた。芸大の人ってやっぱり何か作りたい、表現したいって情熱持ってる人が多くて、すごく活気があるわけです。夏休みに手伝いに行った時、うちの大学では考えられないほど人が多かったので友人に尋ねてみると、「普段授業とかで忙しいから、やりたいことやるなら夏休みが一番だから」という答えが返ってきた。みんなで集まって何か作ってるわけだ。なるほど、そういう人が集まってる場所なんだよな。そんなわけで怠惰な学生生活を過ごした自分には眩しすぎたのであった。って夏休みに情熱燃やして何かやってる人なんていくらでもいるわけで、つまりは自分がダメなだけなのだけど、でもやっぱりある種特別なものを感じる場所だと思う、芸大ってところは。
 あんまり意味のない前置きだった。さて本作は芸大の映画サークルを舞台としたお話なので、そんな青春物語なのかと思っていたのだがそんなことはなかった。いや、前半はわりとそんな感じだけど。ストーリーとしては主人公の二見遭一が自主制作映画に参加することになり、天才と噂される最原最早と出会って映画の撮影にのめり込んでいく、といったお話。200ページ強の短い作品なので具体的な制作シーンはあまり多くない。キャラクターの会話も面白かったのでそういった部分ももう少し見たかったなと思うけど、読み進めていけばこの作品の目的はもっと別の部分にあるのだと分かる。後半少し不穏な空気が流れ出してからが非常に面白く、最後の最後がとても秀逸。最後に驚かせてくれる作品は大好物です。最近のラノベってその是非は別としてとかく冗長なものが多いので、すっきりとして無駄のない構成が際立って綺麗に感じられた。良質なエンターテイメントでした。
 そういえばメディアワークス文庫を読むのは初めて。MW文庫って電撃文庫より少し大人向けっていうコンセプトでできたんだっけ? 確かに電撃よりちょっと大人しい印象があったし、それでいて(キャラの名前もそうだけど)少々現実離れしたラノベらしいところがあって、そういう意味で非常にいい位置取りだったと思う。メディアワークスがそういうのを狙っているのかもっと一般文芸寄りを狙っているのかは分からないけど、こういう作品がもっと出てくるならMW文庫にも期待したいなー。

読書メーター 2011年1月分まとめ

 1月はそこそこバランス良く読んでる感じかな?小説が多めか。就活が忙しくなってきたので物語に癒しを求めてる感じ。小説以外の堅い本は気持ちの余裕か好奇心の勢いがある時じゃないとなかなか重くて読めない。気持ちがだるだるな今日この頃。
1月の個人的ベスト3

 4番目に入れるとしたら土橋真二郎の『扉の外』シリーズ。所謂デスゲームものかな?とある学校の生徒たちが突然閉鎖された環境でに放り込まれて、自分のために他人を犠牲にするかどうかで葛藤したり、異常な状況の中で疑心暗鬼になっていったり、人間関係がドロドロしていったりするような心がギシギシ軋むお話。3巻完結で3巻とも僕の好みにストライク過ぎて、同著者のMW文庫『殺戮ゲームの館(上・下)』と『生贄のジレンマ(上・中・下)』を揃えてしまった。あと電撃文庫の『ツァラトゥストラへの階段』の3巻を買えば土橋真二郎名義の本はコンプリートかな?まだ読んでないんだけど、どれも楽しみすぎる。
 ベスト3に入れたのは3冊ともSFで、どれも有名な作品らしく、そしてどれも本当にすごかった。特に『ハーモニー』は最も印象に残ったかな。うまく言えないけど、琴線に触れるっていうのはこういうことなんだな、と感じるくらい響くものがあった。平和で優しい完璧な世界に見え隠れする狂気とか、淡々とした静かな雰囲気とか、美しい文章とか、なんというかもう全部素晴らしい。『虐殺器官』も『ハーモニー』も感想書けなかったけど、いずれ再読して何か書く。著者も色んな意味で凄い人で、夭折されたために長編は3作(+未完の1作の序盤)しか残っていないそう。ロクにSFを知らない僕が言うのもなんだが、本当に惜しい人を亡くしたと思う。残った長編は有名なゲーム『メタルギア』のノベライズ。メタルギアは1作もやったことないので予備知識はないけれど、読んでみる。
 『玩具修理者』は一つ前の記事に書いた通り。この作品に好奇心を喚起されて量子力学の入門本(というより紹介本?)みたいなのを読み始めたんだけど、長らく数学にも物理にも触れてないので読むのにすっごい時間かかる……でも面白い。現実の現象なのに現実感が遠すぎる。全ての可能性が同時に重なってるってそういう意味だったのかー、とか。量子力学の話を使った作品は結構読んだことあるけど、こういう本をちゃんと読んだことはなかったなー。もっと早く読んでおくべきだった。高校でテコだとか滑車だとか電流だとかくそつまんねー計算の話よりこういう話してくれれば理系科目に興味持てたかもしれないのに、と思ったけど、高校時代の自分にこういう話されても難しいこと考えるのめんどくせーとかいって投げ出してそうだ。げふん。

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小林泰三『玩具修理者』(角川ホラー文庫 1999)

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

感想

 小林泰三の最初の作品集。元々ホラーもSFもあまり読まない人間だったので、この人の本は表紙に釣られて買った『天体の回転について』しか読んだことがなかった。この本には表題作の短編『玩具修理者』と、やや長めの『酔歩する男』の2作品が収録されている。『玩具修理者』は40p程度、『酔歩する男』は170pほど。ページ数にすれば両方合わせてもわりと薄い本なのだけど、中身はすごく濃い。
 『玩具修理者』はホラー短編で、独楽でも凧でもラジコンでも死んだ猫でも何でも直してくれる玩具修理者なるものがいて、誤って死なせてしまった弟をその姉が直して貰いに行く……という話。短いながら全体的にグロテスクで(情景を思い浮かべると、という意味で)視覚的な怖さがあり、かつ玩具修理者という存在から話のオチに至るまで、何かぞわっとくる精神的・雰囲気的な怖さがあった。とりあえず怖い。自然に組み込まれている哲学チックな話も印象的だった。
 『酔歩する男』は時間SFと言えばいいんだろうか。時間の概念と量子力学の話……かな?とにかく凄かった。読んでいて震えた。論理的に話が進むのにどんどん常識とかけ離れていく、というより自分の中の常識が崩されていくといった方が正しいか、よくこんなこと思いつくなあ、という感想。ちゃんと追っていけばわけが分からなくなることはないけど、でも「あ……ありのまま今起こったことを話すぜ!」のポルナレフのAAを思い出す。話の内容的にも、頭がおかしくなりそうだった的な意味でも。そんな感じのお話。SFだけど『玩具修理者』とはまた違った怖さがあって、この作品世界を理解するほどぞっとする。『天体の回転について』に入っている作品で言えば「時空争奪」に何となく印象が似ていた。以前『紫色のクオリア』を読んだ時の気分にも似ているかも。素晴らしい作品だった。この人の作品をもっと読んでみようと思う。

魔法少女まどか☆マギカ3話とか

 書いてなかったというかブログに最近何も書いてない。もう今日は4話放送日じゃないか!本の記事も書いてないし、なんかもっと書き散らそうと思って始めたんだけどなー。クソ駄文でも本とかは読んだ後なんか書いた方が記憶に残るし。最近は就活がダルダルで癒しを求めてラノベばっか読んでる。まだまだこれからなのに今からダルダル言ってるようでは駄目なのだが……
 とりあえずまどかマギカは3話にして神展開だったなー。脚本が虚淵玄だとはいえ1,2話が大人しかったから少し油断してた。こんな早くからやらかしてくるとは。もうこの1週間で10回くらい見直したかもしれない。放送直後興奮しすぎて眠れなかったくらい。BDも買うかな。4話も楽しみすぎる。
 見直しながら色々メモって考えたけど、ネットで見た『鏡の国のアリス』との関連は流石に思いつけなかった。というか手元にあったけど読んでなかった。「素晴らしき日々」にハマって関連書籍読みあさった時に買って、そのまま積んでたんだっけ。不思議の国の方は読んだんだけど。そんなわけで鏡面世界説が正しいかどうかは分からないが、折角手元にあるので今度読んでみよう。全体的にドイツ語やドイツ文学ネタが多いっぽいからイギリス文学のアリスはちょっと違う気もするけど。
 今期のアニメは他にIS、夢食いメリー、フラクタルあたりを見ようと思っていたけどまだISしか見ていない。溜まってる分をいつか見ないと……。ISはお約束てんこ盛りのハーレムものっぽいけど、キャラが可愛いので癒し担当として見る予定。たまにはああいうのもいいな。設定チラ見したときはバトルスーツで戦う軍事ものなのかと思ってたらスーツは競技用のシステムだったでござる。どんな展開になるんだろ。とりあえず気になってる中国娘っぽいの早く出てこい。

川原礫『アクセル・ワールド2―紅の暴風姫―』(電撃文庫 2009)

アクセル・ワールド〈2〉紅の暴風姫 (電撃文庫)

アクセル・ワールド〈2〉紅の暴風姫 (電撃文庫)

感想

 1巻が面白かったのになんだかんだで続きを読んでいなかったアクセル・ワールド。1巻で「ブレイン・バースト」のプレイヤーとなり≪加速世界≫で黒雪姫と共に戦うこととなった主人公・ハルユキ。そんな彼の元に突然小学生の女の子が転がり込んできた。彼女を発端として始まった、≪災禍の鎧≫と呼ばれる呪われたアイテムを纏う狂プレイヤーを倒すというミッションが今回の主軸。2巻にしてこんなロリヒロインが出てくるとか胸が熱くなるな。と言っても幼くあどけない妹という初見の印象を登場して早々にぶち壊してくれる訳だけども……。
 展開としては今回も王道でまさに努力・友情・勝利といった感じであって、加えて1巻で提示された世界観がぐんと広がった。新たなフィールド、レベルアップや<親>と<子>の関係など、徐々に設定が明かされると共に、≪加速世界≫における7人の王のうち黒雪姫含め3人が登場する。この辺は黒雪姫の過去にも大きく関わってくるところで、この巻ではまだ明らかにならないことも多いのだけど、情報の小出し加減が絶妙で先が非常に気になる。今回から本格的に勢力同士の争いに加わっていくので、今後は集団戦がメインになるのだろうか。バトル成分が1巻より増えていて、今後も戦いは激しくなりそう。
 相変わらず黒雪姫はとてもかわいい。挿絵も安心のクオリティ。1巻ではハルユキに近付くチユリに黒雪姫が嫉妬、今回は小学生・トモコがチユリと似たような位置にいたので、この作品は1巻ずつゲストヒロインが出てきて物語が始まりつつ、黒雪姫がやきもきしながら設定披露+バトル展開、という進行なのかな?1巻の面白さが失速することなく、楽しく読めた1冊だった。