片岡とも『ナルキッソス』(MF文庫 2008)

ナルキッソス (MF文庫 J か 5-1)

ナルキッソス (MF文庫 J か 5-1)

 久し振りにラノベを読んだ。依然として増加し続ける積み本の中でも結構前から積んであった一冊。確か同人ゲームのノベライズだったはず。PSPでも発売されたんだったかな? 原作は結構有名なので名前は知っていたけれど、何度かやろうと思いつつ結局やらなかったので書店で見かけた際に小説版を買ってみたというわけだ。それで積んでちゃ意味がない……。
 ある日突然死に至る病にかかった主人公・優。彼は入院することになった末期患者用の病棟で、同じく死を宣告されているヒロイン・セツミと出会う。家や病院で最期の時を迎えることを望まない二人は、親の隙を突いて車の鍵を奪い、あてのない旅に出る。そんなお話。
 全体的に静かで切ないお話、雰囲気としては個人的に好みな部類。ストーリーは奇をてらったものではなくて、特に目新しさや驚きはない。それ故に主人公やヒロインの心情描写が大事になってくるわけだけど、語り口が淡々としているので少し物足りない気がした。原作は絵や音がついているのでまた違ってくるのだろうけど、小説としてはもう少し踏み込んで欲しかったかも。終盤の展開は綺麗だったし、終わり方も良かったと思う。もし自分があの状況に立ったとしたら、きっと蒔絵さんと同じことを考える。けれどセツミの望みを読み取って受け入れるのであれば、主人公のとった行動が正解だったのではないだろうか。
 読んでいて『半分の月がのぼる空』『旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。』あたりを思い出した。この手の題材を使ってる話は非常に多いので、どうしても既視感を憶えてしまうのは仕方ないよなあ……。似た話を読んだことがなかったらもっとグッと来たかもしれない。とはいえ、良い話でした。一文が短い上にほぼ必ず改行してあるのでほとんどの行が一字下げになってるのがちょっと気になったけど、それは著者の本業がシナリオライター故か。イラストはカラーとモノクロで担当の人が違うようだけど、どちらも可愛い。年上なのにロリなヒロインとは良いものですね。しかし旅の途中で量販店で買うセツミの服、とても学校の制服っぽい。表紙イラストがその服だったから、読むまでずっと学園ものだと思ってた。