加藤昌治『考具』(阪急コミュニケーションズ 2003)

考具 ―考えるための道具、持っていますか?

考具 ―考えるための道具、持っていますか?

 常にアイデアを出し続けるというのは大変なことだと思う。作りたいものが色々あって、そのために日々色々考えてはいるんだけど、どうも納得出来るアイデアはそう簡単には出てこない。そんなときにこの本の評判を聞いたので読んでみた。この本の著者は大手広告会社の博報堂でPR関係の仕事をしていて、毎日大量のアイデアを求められる環境に置かれているという。この本はそんな著者が日頃様々なアイデアを出し、企画をするための方法論――「考具」が紹介されている。
 なるほどな、と目から鱗な方法がいくつも載っていて非常に参考になった。見たことあるものも多いけど、きちんと整理して並べてあるのでポイントを確認することができた。難しいものは一切ない。使う道具も紙やポストイットくらいのもの、何も使わない方法も多かった。これらの「考具」を使えば誰でも簡単に、そして楽しくアイデアが出せそうだ。ただ、知っているだけでは意味が無くて、こうした方法論をいかに自分に馴染ませていくか、そしてそれらを元に自分なりの方法論を確立していこうとする姿勢が大事だろう。

あなたにとって最大の問題は、「読んで、分かって、やらないこと」。

 本などを読んでもそれで満足してしまうことの多い僕としては非常に耳が痛い。実践しなきゃ道具を持ってたって意味ないよね。アイデア出すぞ−。

片岡とも『ナルキッソス』(MF文庫 2008)

ナルキッソス (MF文庫 J か 5-1)

ナルキッソス (MF文庫 J か 5-1)

 久し振りにラノベを読んだ。依然として増加し続ける積み本の中でも結構前から積んであった一冊。確か同人ゲームのノベライズだったはず。PSPでも発売されたんだったかな? 原作は結構有名なので名前は知っていたけれど、何度かやろうと思いつつ結局やらなかったので書店で見かけた際に小説版を買ってみたというわけだ。それで積んでちゃ意味がない……。
 ある日突然死に至る病にかかった主人公・優。彼は入院することになった末期患者用の病棟で、同じく死を宣告されているヒロイン・セツミと出会う。家や病院で最期の時を迎えることを望まない二人は、親の隙を突いて車の鍵を奪い、あてのない旅に出る。そんなお話。
 全体的に静かで切ないお話、雰囲気としては個人的に好みな部類。ストーリーは奇をてらったものではなくて、特に目新しさや驚きはない。それ故に主人公やヒロインの心情描写が大事になってくるわけだけど、語り口が淡々としているので少し物足りない気がした。原作は絵や音がついているのでまた違ってくるのだろうけど、小説としてはもう少し踏み込んで欲しかったかも。終盤の展開は綺麗だったし、終わり方も良かったと思う。もし自分があの状況に立ったとしたら、きっと蒔絵さんと同じことを考える。けれどセツミの望みを読み取って受け入れるのであれば、主人公のとった行動が正解だったのではないだろうか。
 読んでいて『半分の月がのぼる空』『旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。』あたりを思い出した。この手の題材を使ってる話は非常に多いので、どうしても既視感を憶えてしまうのは仕方ないよなあ……。似た話を読んだことがなかったらもっとグッと来たかもしれない。とはいえ、良い話でした。一文が短い上にほぼ必ず改行してあるのでほとんどの行が一字下げになってるのがちょっと気になったけど、それは著者の本業がシナリオライター故か。イラストはカラーとモノクロで担当の人が違うようだけど、どちらも可愛い。年上なのにロリなヒロインとは良いものですね。しかし旅の途中で量販店で買うセツミの服、とても学校の制服っぽい。表紙イラストがその服だったから、読むまでずっと学園ものだと思ってた。

うまくいかない

 2ヶ月ぶりに更新。現在いろいろと上手く行かないことが多く、本もあんまり読めてないし、なかなかに心に余裕のない生活をしております。一時かなり沈んでたけど、最近は落ち着いたので自分のペースでやっていこうと思う。振り回されなくて良いものに振り回されすぎるのが自分の悪いところ。
 最近は訳あってミヒャエル・エンデ関係の本を色々読んでいる。『はてしない物語』しか読んだことがなかったけど、『モモ』とか『魔法のカクテル』が非常に面白かった。『遺産相続ゲーム』『サーカス物語』などはそれまで抱いていたエンデ作品への印象とは違っていたので少し驚いた。僕は重苦しい雰囲気の話は大好物なんですごく楽しめたけれども。『モモ』はエンデの社会批判と関連して取り上げられることも多いので、関連書籍・論文と共に読むのも面白い。エンデの貨幣論や地域での新しい貨幣づくりの取り組み*1を紹介しているNHK出版の『エンデの遺言―「根源からお金を問うこと」』は、僕が元々地域通貨に興味があったこともあって非常に興味深い本だった。
 うーん、もっと小説をゆっくりたくさん読みたいなー。欲しいのを見かけたらとりあえず買っておくので積み本が増える増える。

*1:これはエンデの貨幣論を元にしたものではなくて、彼に大きな影響を与えたシルヴィオ・ゲゼルやルドルフ・シュタイナーの思想を元にしている

読書メーター 2011年3月分まとめ

 一度止まると全く書かなくなってしまうことってあるある。本は読みっぱなしだとすぐ忘れるので読んだら少しでも感想は書いておいた方がいいよな、と思いながらこのざま。そして3月は随分少なかったな。確かに忙しいっちゃ忙しいけど時間は十分あるし、これまでのペースから考えたら月10冊くらいは読んでおきたいな。
 まどか☆マギカ10話はもう感極まって泣いて10回以上繰り返し見たレベルで神回だったんだけど、どうも感想書くタイミングを逃してしまった……11話・12話が21日に連続放送決まったし、終わってから振り返りますかね。本当にここまで琴線に触れた作品は久し振りだ。

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魔法少女まどか☆マギカ 9話

 うんむ、ここ一週間忙しくてロクに書けなかった。でも色々気付きがあったり、面白いことが起きそうだったり、悪くない一週間だったかな。気付いたらまどかマギカ10話放送日になったので簡単に9話のメモを書いておこう。
 キュウべぇ殴りたい。まどかは3話以降毎回泣いていて、でも今回キュウべぇと話すシーンでは涙は流していないけど、それでもあのシーンはとても悲痛だった。宇宙とかエントロピー云々のSFネタが好き嫌い別れてるっぽいけど、個人的には全然気にならなかったかなあ。キュウべぇが人類とはかけ離れた価値観を持つ存在ってのを強調するための台詞なんだろう。しかし目減りしていくエネルギーを補填・拡充するためとは……この展開は流石に予想できない。8話の「もったいないじゃないか」って台詞はここに繋がるわけか。
 印象的だったのは杏子がまどかにさやかの救済を持ちかけるシーン。まさかうまい棒(劇中はうんまい棒だったけど)で泣かされるとは思わなかった……。見直してから気付いたけど、あれはバトンなんだな。中盤から物語のメインを演じていた彼女(もしくは彼女たち)から本当の主人公への。杏子は登場が遅かったけど、この作品は何度も見直して全キャラに愛着があるので自分の原点を語り出した辺りから既にきつかった……さやかも、やっぱりもう助からないんだなって。杏子のお陰でさやかは一人にはならなかったけど、想いは遂げられなかった。人魚姫を連想させる魔女の姿が意味深い。さやかは果たして救われたんだろうか?上條と仁美の件は8話ではぼかされてたけど、この後さやかの死体が現世(?)に残ってる件と合わせてまだ何らかの展開はありそうだ。
 次回からついにまどかとほむらがメインになるのかな。雑誌インタビュー等によれば10話はほむほむの秘密が明らかになるっぽいので、ほむほむ派としては全力で全裸待機するしかない。

読書メーター 2011年2月分まとめ

 もう2月が終わった……だと……?そんなわけで2月の読書まとめ。就活で忙しくて(ほぼ言い訳)あんまり読めなかったし感想もまとめてないなー。毎日のように(京都から)大阪行ってるから電車内で本読んだりはするんだけど、家に帰ると疲れてダラダラして本も開かないしブログも書かないという。とっとと終わらせて積ん読本を狂ったように消化したいわー。
2月の個人的ベスト3

 『翔太と猫のインサイトの夏休み』がすごく面白かった。表紙は子供向けっぽいイラストで、著者も中学生くらいの人に読んで欲しいと言っている哲学の入門書(とかいいつつ大学の授業でも教科書として使用しているらしい)だけど、中身はそんなに簡単でもない。哲学の基礎となる問題が小説の形式で分かりやすく説明されていて、哲学には興味があるけど大して知識がない、という僕みたいな人にはうってつけだった。
 『カラマーゾフの兄弟』はいつか読もうと思っていて、でも長いし今すぐ読みたいと思っていたわけではなかった。光文社の新訳版が学校の図書館で結構人気なのかいつも1巻が貸し出し中だった。しかしある日行ったら置いてあったのでこれは借りておくしかない、と思って手に取った。有名な作品だし読んでみようかな、程度の気持ちだったが予想以上に面白かった。登場人物の紹介が中心の第1編となんかカオスな会合の話である第2編は「ふんふん……」って感じで読んでたんだけど、女の取り合いで荒れる第3編で俄然面白くなった。カテリーナの告白が可愛すぎてたまらん。今2巻を借りて読んでいるところ。
 『[映]アムリタ』は記事にまとめた通り。この作品が気に入ったので同じ著者の『舞面真面とお面の女』『死なない生徒殺人事件』も買った。相変わらず積み本が増える増える。『なれる!SE』も面白かった。現在就活中でSEになるかもしれない自分としては怖かったけど……。上司がロリ少女だったり事務のお姉さんと仲良くできるならブラック企業でも耐えられる気がするけども、現実はそう甘いわけがないのであった。

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魔法少女まどか☆マギカ 8話

 凄かった。毎回面白いんだけど、今回はインパクト最凶だった3話よりも面白かったように感じる。予想外の展開だったというわけではなくて、これまでの伏線が少しずつ片付けられていくといった展開だったけれども、情報量の多さと秀逸な演出で終始興奮しっぱなしだった。
 冒頭でさやかがまどかを非難するシーンはどう見てもさやかが理不尽なことを言ってるんだけど、彼女も精神的にボロボロでもう限界なんだろうなあ……。さやかは元々思い込みが激しくて少し考えの浅いキャラで、マミさんの忠告にも関わらず上條のためにあっさりと契約してしまったり、自分で選んだ道なのにそれを使命だったかのように語ったり、時折その不幸な境遇への自己陶酔っぽいものが感じられる。別にさやかをディスる気持ちは微塵もなくて、個人的にはその愚かさこそが人間臭くて愛おしいのだけど。まだ中学生だし、非現実的で恐ろしい世界に放り込まれてしまったわけだから、正常でいられないのが正常だろう。しかしどう考えても立場的にはちょっとした間違いから負のスパイラルに陥って破滅を迎えてしまう役どころであって、幸せにはなれそうもないよなあ……。杏子との会話から「あたしって、ほんとバカ」の泣き笑いのシーンは音楽と相俟って涙腺が緩む。ソウルジェムが砕け散ったさやかはもはや悲しむこともできそうにないけれど、そこに居合わせた杏子やさやかを探し続けるまどかからして、まだまだ地獄はこれからだ……という感じ。
 そういえばホストのシーンはここまでの雰囲気からすごく浮いている印象を受けたが、ネットで考察を漁っていたら非常に興味深いものがあった。検索すればすぐ出るので詳しい事は書かないけど、結局一方的な献身を標榜するさやかの生き方っていうのはあのホスト達に便利に使われるキャバ嬢の生き方と変わらないんだよなあ。しかもさやかの上條に好かれたいという気持ちを捨てきれない部分も、ホストに好かれたくて貢ぎ続ける女の姿に重なる。え、えげつねえ……。やはり、願い事は自分のために使うのが最良であって、魔法少女の生き方としても杏子のような姿勢でいることが正しいのか。何度も人のために契約しようとしているまどかは同じ過ちを繰り返そうとしているようで非常に危ういが、マミさんのように見返りを求めず純粋に他人のために戦えるまどかならあるいは……とも思える。まあ、ほむらの言うことが正しいなら、まどかが契約した時点でバッドエンド直行なのだが。
 ほむほむについても今回は色々あったなー。ほむほむ派である自分としては普段仏頂面が多いほむほむの泣き顔を見られただけで神回ですよ。とりあえず「まどかの為に動いている」「ほむらとまどかはどこかで会ったことがある/まどか側が覚えていない」「ほむらはまどか達の時間軸の人間ではない」ってあたりは事実として認めていいのかな。ほむらの正体については色々な説が出ているけれど、現段階ではどれもイマイチ説得力に欠けてて、今後の展開が気になるところ。そういえば雑誌のインタビューによると、ほむらはステータス的には魔法少女の中で最弱らしい。キュウべぇの排除にハンドガン使ったり杏子から逃げる時にフラッシュバン使ってたのはそれを補う為の工夫か。何も魔法少女が魔法だけで戦う筋合いはないと。3話のシャルロットを倒したのもマジカル爆弾じゃなくて持参した爆弾だったのかもしれない。そのステータスの低さは能力の強さとトレードオフだからなのか、それとも彼女の正体に秘密があるからなんだろうか。
 とりあえずインキュベーター爆発しろ。いやあ、すげぇ。インキュベーター=孵化器ねぇ。まさにキュウべぇは魔女の卵を孵化させる存在だったのか。顔の形とか子宮に似てるしな……主に耳から出てる変なものと卵管が。ほむほむが風穴開けた時は一瞬ビビりながらも正直「ざまあwww」とか思ったものだが、その後の再登場→自分もぐもぐ……の流れは気持ち悪すぎて鳥肌立った。おええええ。ラストの「この国では成長途中の女性のことを少女と呼ぶんだろう?だったら、やがて魔女になる君たちのことは魔法少女と呼ぶべきだよね」はそれ以上にぞっとした。魔法少女→魔女の流れは散々言われていて予想外でもなんでもなかったのに、すごいインパクト。この台詞回しと遠景からズームアップの演出は秀逸すぎる。
 気になるところや面白かったことを書き出しているとどの回もキリがないのでこのあたりに。就活中じゃなかったら引きこもって一日中ネット漁ったり見直しまくったりしてガチ考察勢に参加してたかもしれない……。あと4話しかないのが残念でならないけれど、はやく結末を知りたい気もする。どうかまたみんなで笑える日が来ますように!……来るのか?