ふと目に止まった

 今、『広報・広告・プロパガンダ』という本を読んでいるのだけど、米大統領選における戦略的世論調査の技法について解説している章にこんなことが書いてあった。

1992年1月、ジェニファー・フラワーズとのスキャンダルが暴露されると、クリントンCBSの番組に夫人のヒラリーとともに出演し、結婚が危機に陥ったことを認めたが、フラワーズの主張は否定した。このスキャンダルにより、クリントンの大統領への夢も消えてしまったかのようだった。ところが、フォーカス・グループでは、予想と反する結果が得られていた。人々はいらいらしていたが、それはクリントンに対してではなくて、メディアやフラワーズに対してであった。フォーカス・グループの参加者は、経済に関心を持っており、キャンペーンの焦点が個人的な資質に移ってしまうことを怒っていたのである。この結果に基づき、グリーンバーグクリントンに対して、フラワーズをたたけ、間違った争点に固執しているプレスを攻撃せよ、とアドバイスをしたのである。[More, 1995, p.375]
津金澤総廣・佐藤卓己編『広報・広告・プロパガンダ』(ミネルヴァ書房, 2003, p.92)

 フォーカス・グループとは戦略的世論調査における調査方法のひとつで、6人から12人ほどの参加者と司会者が2時間ほど特定の話題について議論するという方法。戦略の立案、一般市民へのコミュニケーション戦略の事前テスト等に利用され、参加者はキャンペーンの関心の焦点に合わせて決められるとのこと。通常の世論調査(多くのサンプルに選択式のアンケートを行う計量的な分析)が意見を測定するのに対して、こっちはその背後の考え方の枠組みを探り出すもの、だそう。グリーンバーグというのはクリントン陣営で世論調査を担当した人。
 もしこれと同じ状況が今の日本で起きたなら、クリントンとメディアのどちらに苛立つ人が多いのだろうか、ね。