プラトン/藤沢令夫・訳『メノン』(岩波文庫 1994)

 twitterのタイムラインで書名を見かけて、後日図書館に行ったらたまたま目に付いたので借りてみた本。こういう出会い方って素敵。

メノン (岩波文庫)

メノン (岩波文庫)

表紙の紹介文

「徳は教えられうるか」というメノンの問いは、ソクラテスによって、その前に把握されるべき「徳とはそもそも何であるか」という問いに置きかえられ、 「徳」の定義への試みがはじまる。「哲人政治家の教育」という、主著『国家』の中心テーゼであり、プラトンが生涯をかけて追求した実践的課題につながる重要な短篇。

感想とか

 プラトンの著作を読むのは初めてだったけど、メノンとソクラテスの対話が面白く、話もそこまで難解ではないのでサクサクと読めた。メノンの問いに対して、ソクラテスが彼に質問を投げかけながら「徳」という概念についての考察を行なっていく。「きみは〜と言った。それならば〜だね?」「明らかにそうですね」「であるならば、〜となるのではないだろうか?」「なるほど」「そうすると、〜となるのではないかね?」「確かにそのようです、ソクラテス」と、こんな調子で会話が進んでいく。メノンは萌えキャラ。メノンとソクラテスは「徳は教えられうるか」について一応の答えは見出すものの、「徳それ自体は何であるか」という問題については結局結論が出ていない*1。さて、徳とは一体なんなのだろう。おそらくその問いはこれより後に書かれた著作に続いていくのだろうと思われる*2。折角この本に出会ったのだから、この本を起点に少しずつ他の著作にも手を付けてみようかと思う。

*1:ソクラテスはまず後者の問いを解決しようとしたが、メノンがその問題の解決を待たず「徳は教えられうるか」という問いの考察に戻る事を主張したため。ソクラテスは仕方なく、「仮説」の方法によってその問いを考察する

*2:この本はプラトンの前期の著作に分類されるらしい。有名なイデア論は中期諸対話篇において本格的に展開されてゆくそうだ