陣内秀信『南イタリアへ! 地中海都市と文化の旅』(講談社現代新書 1999)

南イタリアへ! (講談社現代新書)

南イタリアへ! (講談社現代新書)

感想

 5年くらい前だったか、NHKの特番で「イタリア縦断1200キロ」という番組を見た。イタリアの都市を1日にひとつずつ、8日間にわたって生中継で紹介していく番組だった。西洋建築やイタリアの歴史的な都市に(全然詳しくはないものの)興味のあった僕には非常に嬉しい番組で、毎日ワクワクしながら見ていた記憶がある。その番組で案内役のひとりとして出演していたのがこの本の著者、建築歴史家の陣内秀信氏。この人は話も面白いしとても褒め上手で、本当にイタリアが好きなんだなー、と番組を見ていて感じた。あの番組、後日放送された総集編を録画しておいたのだけど、手違いで消してしまった。ちくしょう、もう一度見たいなあ……
 そんなことがあって、図書館で新書を見ていたら陣内氏の名前を見つけて手に取ってみたのがこの本。それぞれ特徴を持った南イタリアの14の町が紹介されている。著者のフィールド調査に基づいて都市構成や建築の特徴・文化が語られており、図表やカラー写真も多数掲載されていて、文章とビジュアルの両方で楽しめる。この人の文章は論理的な分析・解説をしつつも感情に訴えかけてくるような暖かみがあって、思わずイタリアを訪れたくなる気持ちにさせられた。まさにヨーロッパといった感じの有名な都市は北イタリアに多いけれど、独特の文化・様式を持った南イタリアの都市も魅力的だなあ。イタリアは統一が遅かったこともあって都市の独立性が高く、それぞれが全然違った個性的な特徴を持っているので、ひとつずつ見ていくだけで本当に面白い。
 実はこの人の本を読むのは2冊目で、『ヴェネツィア――水上の迷宮都市』(講談社現代新書)を読んだことがある。これもすごく面白かった。でも読んだの結構前なのでもう一度読もうかなー。そういえばARIAを読む前にその本を読んでいたので、ボッコロの日とか海との結婚とか出てきた時にすごくニヤニヤできた。ARIAが好きな人にもお勧めの本。

目次

1.ナポリ──蘇るネアポリス
2.ラクイラ――<99>のカステッロが築いた都市
3.モンテ・サンタンジェロ──山上の聖天使の町
4.レッチェ──びっくり箱のバロック迷路
5.チステルニーノ──丘の上の真っ白な町
6.アルベロベッロ──トゥルッリ民家が立ち並ぶ斜面の町
7.マテーラ──廃墟から再生する洞窟都市
8.ノート――記憶が埋め込まれたバロックの計画都市
9.シャッカ──イタリアがアラブに接する都市
10.パレルモ──田園に囲まれた楽園都
11.サルデーニャ――聖なる場所の継承
12.アマルフィ――山を背に「海の文」を持つ中世都市
13.プロチダ──ナポリ湾に浮かぶ漁師の島
14.ポッツオーリ──遺跡とともに生きる町